2023.01.06
社会保険
公的年金のお得な受け取り方
繰上げ受給・繰下げ受給
公的年金の老齢年金(老齢厚生年金、老齢基礎年金)は一部を除き、原則65歳から給付が開始されることになっています。
しかし「もっと早く年金もらいたいな」「もっと年金の額多くならないかな」という要望に応えて繰上げ受給、繰下げ受給という制度があります。
繰上げ、繰下げというのは簡単に言うと
・繰上げ受給→60歳になったときから65歳になるまで最長で5×12=60カ月65歳前から年金をもらうこと
・繰下げ受給→65歳になったときから75歳になるまで最長で10×12=120カ月65歳後から年金をもらうこと
1年単位ではなく1か月単位で繰上げたり繰り下げたりできるので、63歳4か月から繰り上げることも、69歳7か月から繰下げることも可能。
「繰上げ、繰下げ受給」は、65歳からではなくて繰上げ、繰下げをした時から老齢年金をもらうことを言います。
メリット・デメリット
一旦繰上げをすると、取り消して65歳からもらうことはもうできません。繰下げをして思いのほか早く亡くなってしまっても、65歳から繰り下げた分を遺族年金などでもらうこともできません。よく考えて繰上げ、繰下げをする必要があります。よく考えるポイントの一つは繰上げ、繰下げをした時に通常65歳で受給するよりも「どれだけ減るか(繰上げ)」、「どれだけ増えるか(繰下げ)」ということです。
・繰上げ受給→65歳より早くした月数×0.4%分年金が減る。
・繰下げ受給→65歳から受給開始した年齢までの月数×0.7%分年金が増える。
例えば、65歳で200万円老齢年金をもらえる人が下記のように繰上げ、繰下げをすると
・繰上げ受給(60歳~)152万円
・繰下げ受給(70歳~)284万円
となり、この減ったり、増えたりした年金額は亡くなるまで原則生涯変わらないことになります。
老齢年金の受給累計額
では、繰上げをした方が得なのか、繰下げをした方が得なのか、するとすればいつするのかが気になると思います。
もちろん長生きするかなという場合は、繰下げが「額が増えて長くもらえるので」得でしょうし、短命であった場合は「亡くなる前のもらえる期間がのびたので」繰上げが得かもしれません。
人はいつ、何歳で亡くなるか誰にもわかりませんが、何歳まで寿命があればいくらくらい受給できるのかを考えてみることは繰上げ、繰下げの判断に役立つかもしれません。
以下の表は年金月額20万円つまり65歳から年金が240万円もらえる人が繰上げや繰下げをすると何歳までに累計でいくらもらえるかを表しています。単位は「万円」です。例えば60歳で繰上げ受給し、70歳までで累計いくら受給できたかというと「1824万円」となります。
表の見方は、まず年齢欄で累計額を「何歳まで」見積るか考えます。64歳?68歳?73歳?80歳?85歳?100歳?。。。「ブルー」のセルで探してください。次にその下方向、「たて(縦)」に見て、黄色がその年齢までの累計額が一番多くなる(得する)金額です。そのまま左端をみるとその時の「受給開始」年齢がわかります。
例えば、80歳まで累計を考える場合、①年齢欄(ブルー)の80歳を見て、②その下の3,698万円が黄色になっているので、③左端をみると62歳とわかります。
つまり寿命が80歳と仮定した場合は、62歳から繰上げ支給を開始することが他の繰上げや、繰下げをするよりも一番たくさん(3,698万円)もらえることになります。その3,698の「上下」欄のどこを見ても3,698より「少ない」ですね。65歳から通常もらった場合は80歳までで3600万円、67歳から繰下げ支給した場合でも、3,644万円と、3,698万円より少ないです。
ちなみにもらえる累計額は80歳までなら、79歳でも75歳でも65歳でも(80歳より短命であるほど、、、)「繰上げがメリットあり」となっていることがわかります。
男性の場合、平均寿命が81.47歳、女性が87.57歳です。(厚生労働省「簡易生命表(令和3年)」)
ですので、特に男性は繰上げかな~と考えたりしますが、もう少し厳密にいえば、平均余命で考える方が良いですね。
平均余命は「現在」の年齢から平均して「後何年」存命かを表したものです。平均寿命は現在0歳としての平均余命ですね。
今まさに繰上げ受給が可能な60歳男性だと、平均余命は24.02なので84歳くらいの年齢になります。平均寿命よりも3歳程度上です。
まとめ
繰上げ、繰下げ受給をいつ、いくらくらいしようか、いや何もせずに通常の65歳からもらえばいいかなどを考えることは、老後の資産運用にとって重要なことがお分かりいただけたでしょうか?
前提となる「予定年金月額」は、サンプルでは20万円ですが、この額に関しては皆さんのお手元に届く「年金定期便」を御覧ください。
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